先日Blue Prism World Tokyo 2019に参加してきました。
Blue PrismといえばRPAという名前を生んだ企業。
https://ciprogram.jp/rpa/blue-prism-world-tokyo-2019/
Blue Prismを導入した企業の非常に有益な事例ばかり。
そんな中で考えさせられるところがあったのでメモメモ。
RPAを推進する中で、業務をRPAに置き換えられる人へのケア
以前損保ジャパンのニュースに対してバク切れして記事にしたことがあります。
https://ciprogram.jp/topic/never_use_sonpo_zapan/
RPAや業務改善を推進している方なら理解してもらえるかと思いますが、
ユーザーをアイスブレイクして協力してもらってはじめて成功する業務です。
正論で攻めるなら、業務フローからRPAを起こすのが最も簡単です。
しかし、システム屋や引継ぎを受けたことがある人なら感じたことがあるはず。
――このフロー現行業務と全く違うじゃん。しかも例外処理書いてない……
こういう時にはユーザーにヒアリングするしかないわけです。
そんな時、損保ジャパンのような記事のせいで業務を進めにくくなるわけです。
「私の仕事が全部自動化されたら、お払い箱じゃないか」
こんなこと思われたら試合終了です。
たしかにこの状況を無理やりこじ開けることもできるでしょう。
上を使って手を回せばいいだけです。
しかしそれで終わりです。
重要な例外処理を隠されたり、最新化されていない業務フローを渡されて終了。
そして、RPAってやっぱり使えないよねとなるわけです。
人へのケアはマジで重要
第一生命の人へのケアの取り組み
そんな中、第一生命のセッションでは人材を単純作業から解放し、より考える必要のある分野への進出をしてもらうために
RPAを推進し、さらにRPA化はコスト削減よりもユーザーへの利便性向上を目的に導入を進めたと説明。
なるほど、非常に前向きな取り組み。
一方で要件を聞いて、単純にRPA化するのかあるいはEUC、Accessで対応するかも判断しているそうな。
確かに業務によっては、それもうさ、システムでワークフロー化したほうがよくない?っていうのもあります。
まあそういう現場からの意見を出させるいい機会にもなってるかも
JALの人へのケアの取り組み
ユーザーに対して、やはり付加価値領域にシフトしてもらうための取り組みとして推進しているようです。
第一生命同様前向きな推進の仕方ですね。
さらにROIにこだわりすぎないというのもありかもしれません。
例えば単純作業をやらせれば離職リスクが増します。
RPA製造費用に対して年間作業コストが低くても、別の切り口でのコスト増(離職に伴い採用コスト・教育コストが無駄になり、同じポジションの採用コストがかかる)となります。
今までの日本では労働力は使い捨てとばかりに、酷使し、精神を病ませ、あるいは疲弊させては辞めさせて、新しく調達するというブラック企業が生きながらえてきましたが、
労働人口減少や、SNSなどで情報化が進む(ブラック企業情報は出回るのが早い)これからの日本では、淘汰されていくでしょう。
そういった意味で、別の側面からみると投資効果は出てきますね。
テレフォニアの取り組み
通訳を介してなのですべて理解できたかといえば難しところですが、
こちらの企業でもよりクリエイティブな業務へのシフトのために推進してるとのこと。
さらに、コスト削減ではなくユーザーへのサービスレベル向上のために取り組んでいるとか。
たしかに自動化することで、ヒューマンエラーが排除できる分品質も向上して、作業も早い(何なら夜間にも動く)のでデリバリーも改善できると、おまけにコストも安い。
QCD三方よしですね。
一方アビームからは厳しい意見も
RPA化業務の選定についてはROIを意識し選定するというのを主張していましたね。
目的を誤るな、RPA化が目的ではない、RPAを使ってコストを抑えることであり、
現場の心理的負担が高い業務=いやな業務をRPA化するべきではない。
なるほど、確かに百里ある。
まあ、この辺りは経営者次第というところです。
徹底的に投資対効果を見るのであれば、アビームのやり方が一番でしょう。
個人的意見ですが、ROI以外にも付帯効果があるとおもうんですけどねー。
RPAを推進が成功している企業のポジティブな方法まとめ
- 単なるコスト削減ではなく従業員により付加価値の高い業務をしてもらうために推進している
- ROIにこだわらず、推進している(離職コスト等ROIから見えないコストも意識している)
- 顧客へのサービスレベル向上のためにRPAを推進している
→ポジティブな意識改革して、RPAを進めていって、この日固定業務があって休めない状態から自由に有休がとれる企業(社会)にしていきたいものです。
RPAはデジタル労働者なのか、EUCなのか問題
これはRPAをどのように管理するかという問題になっていきます。
RPAは労働者かEUCなのか、管理や結果責任はどの規定や部門にはねてくるのか
まあ細かい話ですが、いずれははっきり考えなければいけないことかなと思っています。
内製した場合には、労務費でいいのかプログラムとして資産化しなきゃいけないのかなんて細かい話も出てくるわけですね。
メッツライフ生命のRPA管理
メッツライフではスクリプトではなくデジタルワーカーとして管理しているとのことで、
多分英語の訛りのせいなのか通訳の翻訳精度が……
どうでもいい所感ですが、TOEICでオーストラリアの英語でも聞き取りにくいもんね、なんだかインド英語っぽい感じがしました。
ということで、デジタルワーカーとして扱っている理由がうまく理解できませんでしたが、労働者として扱っているようですね。
関係ないですが、BlackBoxと対比させてGlassBoxと言っていたのが、
洒落が聞いているなと思いました。←本当に関係ない
ニコンシステムのRPA管理
ニコンシステムでは冗談交じりながらロボを擬人化しBP派遣従業員と対比して説明していました。
24時間働けて、指揮命令者が複数でもOK、昇進昇級は不要で、退職権利もない、さらに承認権限もなし――
システム上何かしらの承認権限を持たせていないんでしょうね。
ルールが整備されていれば、メクラ承認する管理職よりよっぽど役に立つけど。
まあ派遣社員であれば結果責任は指揮命令者ですね。
規定ではデジタルレイバー事務局開発規定及び運用規定によって管理されるとか。
規定名称から推測するとEUC管理規定的な位置づけですね。
↓登壇したのはこの人。めっちゃ面白かったです。
JALのRPA管理
JALもまたロボットを人格として扱い業務部門の社員として扱っているようです。
そしてIDもロボット用に付与されているとか。
そして結果責任については業務部門で持つといった具合でした。
こちらも基本的に承認行為は行わせず、ロボットの実行結果については実行者と別の人物による承認が必要と。
管理文書としてはRPA開発運用管理基準の付属書として
各RPA製品についての開発・運用ガイドラインを付属させているそうです。
なるほど、かなりIT統制を意識した運用がされていますね。
RPAを推進が成功している企業のRPA管理方法まとめ
- アウトプットについては労働者と同様、業務部門に結果責任がある
- 管理についてはEUCのようにIT関連の規定にぶら下がっている
→確かに結果責任までシステム部門がやってたらパンクしちゃいますよね。
RPA化の開発スピードを増すための組織
非常に面白いのが各社各様の組織体であったことです(当たり前かもしれませんが)
チューリッヒのRPA化推進組織
チューリッヒでは、もともと各部門から上がる要望をコンサルタントがうけ、そこから開発者に落としていったそうですが、これでは非常にスピード感がなかったため組織を変えたとのこと。
変更後の組織では、各部門のマネージャーの下にCI・自動化コンサルをつけて、さらにその下に開発者をつけるような組織体にしたようです。
運用部門は別部隊として切り出しています。
日本生命のRPA化推進組織
日本生命では開発は推進部門が行っているそうです。
いわゆる情シスに当たる部門ですかね。
アビームコンサルティング・ニコンシステムのRPA化推進組織
この2社は非常によく似た組織体でした。
システム部門(ニコンシステム)がオブジェクトを開発し、業務部門がオブジェクトをプロセスにパズルのようにはめ込んでいく。
非常に合理的ですね。
オブジェクトといえばどちらかといえばプログラミング寄りで、ベストプラクティスを踏襲していれば非常に小粒な粒度で、例外処理もきちんとされているものです。
やや専門的な知識や知見が必要な部分をシステム部門に開発させて、業務部門でプロセスに落とし込んでいくと。
アビームコンサルティングの指摘によると、この体制でなければ、情シスの人員がボトルネックとなりスピード感のあるRPA化が行われず、外注すればROIが見込めないとのことで。
いやはや、ほんそれ。
RPA化推進組織について所感
これはまとめではなく所感です。
私としてはニコンシステムズ、アビームコンサルティングの手法が最もスピード感があると感じました。
会社にもよるでしょうが、Blue Prismのオブジェクトを作れる人材となるとかなりハードルが高くなると思います。
一方プロセスのほうであれば、基本的なフローチャートの知識と、基礎的なBlue Prismの操作方法で作れるようになります。
つまりパズルをはめればRPAができる状態まで、システム部門がおぜん立てして、プロセスについては各部門がつくると。
そうすれば自ずとRPAの結果責任は実行者に帰属するというのが啓蒙されますね。
いやはや、よくできてる。
Blue Prism Worldはめちゃくちゃ収穫があった。
いった感想としてはこれにつきます。
自分の中で靄っとしていた部分の答え合わせができたり、
なるほどと思える発見もありました。
自社にいかそう。